前回、「ヨガの目指すもの」の記事の中の 心と体はひとつ「心身一如」 で、以下のように書きました。
ヨガには心身をコントロールして制御するという意味があります。
それができれば、わたしたちの心身は快適で、理想的な状態であるといえます。
ヨガは、この理想的な状態へと心身をコントロールするために、様々な姿勢や呼吸法、動作があるのです。
このように、暴れ馬に喩えられるような心を、いかにコントロールするか。これがヨガの要です。
そして、そのために考えられたのが姿勢。
意識して姿勢を整えることで集中が深まり、心を制御しやすくなるのです。
ヨガのポイント、理想の集中と姿勢
それでは、どのような時に心は集中し、集中するためにはどのような姿勢が理想とされるのでしょう。
まず、心が集中している状態は1つの対象に向かって精神的なエネルギーが注がれている状態です。
このエネルギーは、背骨の中を通って上昇すると考えられており、背骨がまっすぐ伸びて背骨以外の場所に余分な力が入っていない姿勢がとっても大切。
これが集中のために大切な要素であると考えられ、ヨガにおいて欠かすことのできないポイントです。
ヨガの実修方法「八枝則」
紀元前200年ごろに編纂されたヨーガ学派の根本経典「ヨーガ・スートラ」に、ヨガの手順を説明した「アシュタンガ」という記述があります。
アシュタンガ(Ashtanga)とはサンスクリットのAshta(8)とAnga(枝あるいは段階)という意味を持ち、直訳すると8本の枝という意味で「八枝則」と訳されています。
これらの八枝則はどれも同等に大切であり、同時に育んでゆくことが重要とされていますが、実際の実習では、順番に、あるいはいずれかに重点を置いて行います。
それでは八枝則を1つ1つご紹介しましょう。
1.禁戒(Yama ヤマ)
心を変えるには、行動を変え、習慣を変えることが大切。
非暴力 | Ahimsa (アヒンサー) | 暴力をふるわないこと。 |
正直 | Satya (サティヤ) | 嘘を言わないこと。 |
不盗 | Asteya (アスティヤ) | 盗まないこと。 |
禁欲 | Brahmacharya (ブラフマチャーリヤ) | 心身のエネルギーを無駄遣いしない。適切な性行為を行い、性的なエネルギーを無駄使いするような関係を持たないこと。 |
不貪 | Aparigraha (アパリグラハ) | 貪らない。本当に必要なものだけを取ること。自分の利益のために状況・もの・人を利用しない。 |
2.勧戒 Niyama(ニヤマ)
清浄 | Saucha (シャウチャー) | 身心を常にきれいに保つこと。 |
知足 | Samtosha (サントーシャ) | 足るを知ること。好悪なく、あるがままであること。 |
苦行 | Tapas (タパス) | 苦痛を受容する強さを培うこと。 |
読誦 | Svadhyaya (スヴァディアーヤ) | 心身を理想に近づける書物を読むこと。自己をより深く知ること。 |
祈念 | Isvarapranidhana (イーシュヴァラ・ プラニダーナ) | 自己放棄。全てを委ねること。 |
3.坐法 Asana(アーサナ)
快適で安定感があることが大切。
こうした瞑想的な身体にするために、ヨガのさまざまなポーズがある。
4.呼吸法 Pranayama(プラーナヤーマ)
ゆったり深い呼吸。
呼吸によって心を調整する。一方がコントロールされれば、もう一方もおのずとコントロールされる。
呼吸には心身をコントロールする働きがある。
5.感覚制御 Pratyahara(プラティアーハーラー)
心を制御するために、心を主とし感覚器官を従とする。
しかし極端に走らず、程度を知ること。
これは、感覚に意識を集中させ、その時感じられる感覚を静かに感じることから始まる。
6.集中 Dharana(ダーラナー)
集中は瞑想の始点であり極点。
心の中の感覚を制御し、心が走ったら引き戻す、心が走ったら引き戻すということを繰り返して心を訓練する。
集中の対象と一体感を得られるように、ただ見つめる。
7.瞑想 Dhyana(ディアーナ)
これは意識的に得られるものではなく、集中が進むことにより、気づかずに自然に起こる状態。
起こすのではなく、ただ起こる。
8.三昧 Samadhi(サマーディ)
これも、意識的に得られるものではない。
集中(ダーラナー)までの努力が、瞑想(ディアーナ)では無努力となる。しかし瞑想では「瞑想状態の自分」という意識がある。
そしてこの三昧(サマーディ)は、瞑想しているという意識がなくなり、すべての想念、すべての欲望から無私となった状態。
参考文献:心の科学・ヨーガの全容。『ヨーガ・スートラ』を現代に生かす、サッチダーナンダによる変貌への手引き。 |
そして、ヨガには「八枝則」というものがあること、そしてその内容がどういうものか、頭に留めておきましょう。